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REN21「自然エネルギー世界白書2023」紹介

REN21「自然エネルギー世界白書2023」紹介

REN21 “GSR2023:Renewables 2023 Global Status Report”

2023年12月
特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所

 

国際的な自然エネルギー政策ネットワーク(「21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク」本部:フランス パリ)は、を2023年に公表しました[1]。REN21は、科学者、学術機関、政府、NGO、産業団体などの自然エネルギーの専門家による唯一の国際的なコミュニティです[2]。設立直後の2005年から毎年、「自然エネルギー世界白書」(GSR:Global Status Report)を発行しており、多様な分野の専門家からなる世界的なマルチステークホルダーコミュニティを基盤として、広範囲な情報源から収集した公式および非公式ののデータを統合して公表してきており、今年で18年目になります。

今年(2023年)から、自然エネルギー世界白書の構成が大きく変わり、以下の5つのレポート(モジュール)に分割して2023年3月から7月にかけて順次、公表されています。

  • 「エネルギー需要」”Energy Demand”
  • 「エネルギー供給」”Energy Supply”
  • 「システムとインフラ」”Energy Systems & Infrastructure”
  • 「経済的・社会的価値創造」”Economic & Social Value Creation”
  • 「国際的な全体像」”Global Overview”

 

「エネルギー需要」”Energy Demand”

「エネルギー需要」モジュールで取り上げられた4つの需要セクターにおいて、世界的なエネルギー危機の深刻化に対応するため、自然エネルギーの導入が拡大しています。化石燃料の価格高騰とエネルギー供給のリスクは、気候変動に対する対策の強化、目標とすべき政策の枠組み、最近の技術開発の進展などと相まって、これらの需要セクターでの自然エネルギー利用、特に風力や太陽光の利用を拡大する大きな要因となっています。自然エネルギーは、強靭性があり、信頼性が高く、安定的で安価なエネルギー源として、全ての需要セクターで自然エルギーの価値は評価され、世界的な危機への対応が進んでいます。このエネルギー危機に対応する政策としては、EUではREPowerEUプランが欧州委員会から提案され、米国ではインフレ抑制法(IRA)が2022年8月に成立しています。一方で、化石燃料に対する補助金も大きくなっており、自然エネルギーが化石燃料と公平に競争する上での障壁が依然としてあります。

世界全体の産業セクターのエネルギー需要に占める自然エネルギーの割合は2020年には16.8%に達しており、輸送セクターと農業セクターもそれぞれ15.5%程度になっています(図1)。一方で、輸送セクターは4%に留まります。全てのセクターで最終エネルギー需要が上昇している中で、この自然エネルギーの割合も上昇傾向にあります。電化率も全てのセクターで上昇しており、運輸セクター以外は電化率が20%を超えていますが、運輸セクターは数%に留まっています。

図1: セクター毎の総エネルギー需要と自然エネルギーの割合
出所:REN21自然エネルギー世界白書

 

「エネルギー供給」”Energy Supply”

「エネルギー供給」”Energy Supply”モジュールでは、全エネルギー消費の23%を占める電力セクターでエネルギー需要に占める自然エネルギーの割合が、約30%(2022年)に達しており(図2)、174か国が自然エネルギー電力に対して何らかの目標をもち、そのうち37か国では自然エネルギー100%を目指しています。それに対して、全エネルギー消費の約半分を占める熱セクターでは、目標を持つ国は46か国に留まっています。新型コロナの影響からの経済回復が進む一方で、ロシアによるウクライナ進攻の影響でエネルギー危機が現実のものとなり、特に欧州各国を中心にエネルギー政策の見直しが進みました。特にEUでは、ロシアに依存してきた天然ガスなどの化石燃料から自然エネルギーへの転換を進めるREPowerEUが策定されました。世界全体では、2022の1年間で太陽光発電が243GW、風力発電が77GW新規に導入されました。その結果、変動性自然エネルギー(VRE)の割合は年間発電電力量の割合は12%を超えています(図3)。

図2: 世界のエネルギー消費に占める自然エネルギーの割合
出所:REN21 自然エネルギー世界白書2023

 


図3: 世界の年間発電電力量に占める自然エネルギーの割合
出所:REN21 自然エネルギー世界白書2023

 

「システムとインフラ」”Energy Systems & Infrastructure”

 

「システムとインフラ」モジュールでは、世界各国でのVREの増加に伴う電力システムの統合化や柔軟性の向上ための様々な市場制度や技術開発の状況が紹介されています。VREの年間平均の割合が20%を超える国が増え、1日平均では100%近くにも達しています(図4)。さらに、揚水発電や蓄電池などの蓄電技術の導入や、熱セクターや輸送セクターとの統合を目指すセクターカップリングの動向などもあり、デジタル化の進展と共に、デマンド側のマネジメント技術なども進んでいます。

 

図4: 世界各国のVRE割合(年間平均および1日平均)
出所:REN21 自然エネルギー世界白書2023

 

「経済的・社会的価値創造」”Economic & Social Value Creation”

「経済的・社会的価値創造」モジュールでは、自然エネルギーの導入による地域住民そして経済への利益、自然環境や社会への価値について、従来の化石エネルギーや伝統的なバイオマスと比較しています。自然エネルギーの価値としては、気候変動の緩和だけではなく、雇用機会を創出して経済の成長に貢献し、輸入に依存して価格も不安定な化石エネルギーの削減、分散型システムによる送電網から離れた農村部における電力アクセスの向上、貧困の緩和や低所得者の支援、大気汚染や水質汚濁の減少、女性のための雇用や起業の機会創出することでジェンダー不平等の是正、清潔な水や食料へのアクセス改善、冷暖房や通信の接続確保などによる気候変動への適応対策などがあります。本モジュールでは、自然エネルギーの経済的・社会的価値の可能性について、雇用だけではなく、教育、インクルージョン、地域サプライチェーンの創出、エネルギーアクセスなどにも焦点をあてています。

「国際的な全体像」”Global Overview”

「国際的な全体像」モジュールでは、世界全体のエネルギー消費(TFEC)が新型コロナからの回復に伴い増加(2022年は前年から1%増加)するなか、気候危機を避けるために、エネルギー転換をより早く、全ての国を巻き込んでいく必要性を訴えています。2022年の最終エネルギー消費に占める自然エネルギーの割合は12.6%でしたが、化石燃料が78.9%を占めており、CO2排出量は増え続けています。自然エネルギーの割合の内訳は、バイオマス熱や地熱および太陽熱などの自然エネルギー熱が約4,9%、水力発電が3.6%、太陽光や風力などの自然エネルギー電力が3.0%、バイオ燃料が1.0%でした(図5)。2022年のエネルギー供給に伴うCO2排出量は、前年から1%増加しましたが、新型コロナからの回復でCO2排出量が6%増加した2021年よりも増加率は抑制はされています。世界的にエネルギー消費の電化が進んでおり、電化率は2020年までに18.9%に達しています。エネルギー危機にも関わらず、電力消費量は、2022年には2.5%増加しており、CO2排出量も1.3%増加しましたが、電力の排出係数(CO2/kWh)は自然エネルギーの増加により引き続き減少傾向にあります。

図5: 世界の最終エネルギー消費に占める自然エネルギーの割合
出所:REN21 自然エネルギー世界白書2023

 

環境エネルギー政策研究所(ISEP)は、これまで本白書の日本関連データの取りまとめを行ったり、飯田哲也ISEP所長がREN21の理事を務め、この「自然エネルギー世界白書」の2005年の発行から中心的な役割を担ってきました。2013年1月にはREN21と共同で「世界自然エネルギー未来白書」を編纂し、発行しています。「自然エネルギー世界白書」特集ページからもダウンロードできます。ISEPによる日本語翻訳版もあります。

日本国内の自然エネルギー関連の情報についてはISEPが2010年から毎年発行している「自然エネルギー白書」および「自然エネルギー・データ集」をご覧ください。

参考情報:

[1] REN21「自然エネルギー世界白書2023」Renewables 2023 Global Status Report

[2] REN21(21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク)